とんかつ栄ちゃんでソースかつ丼を食べるのは初めてだ。
どのようなものか楽しみにしながら店に向かう。
店に入り、お気に入りの席に座る。
私は今日の最後の客のようで、注文からできあがりまでは早い。
今回はソースかつ丼だ。
マスターは揚がったかつをソースにくぐらせる。
それからそのかつを切るが、とんかつのときの音とは違う。
衣にソースの湿り気がある分、切る音にも湿り気がある。
そして配膳される。
丼の一番上にソースをまとったかつがあり、その下にキャベツの千切りが敷き詰められている。
ご飯はさらに下にある。
初めにとんかつとご飯とを別に食べる。
豚は栄太豚で、ソースと脂身のコンビネーションは良い。
ソースのほのかな酸味は脂の甘みやまろやかさを引き立てるようだ。
しかしこれではとんかつの楽しみ方と同じだ…
丼ならば飯を口に掻き込むべきではないか?
そう思い、口を丼につけて掻き込んでみる。
とんかつとご飯とを別に食べたときとは格段に違う香りの広がりを得る。
丼にできる空間は香りの空間を作る。
飯を掻き込めば、その香りの空気と共に掻き込むことになる。
丼は口をつけて掻き込むのが正解だ。
上品に食べてはダメだ。
キャベツの千切りはご飯に対するソースの侵食を防ぐ。
しかし敢えてソースとご飯を混ぜてもまたおいしい。
旨いに流儀はない。
旨いと思えればそれは正解である。
2015/07/15 22:39