この日を指折り数えて待つほど、私はマスターのメンチかつに心酔する。
早く食べたいので、早めに店に着く。
ベンチにたまる雨水をハンカチで拭い、座って開店を待つ。
空を眺め、街を眺め、行き交う人を眺める。
ゆっくりと時間は流れる。
開店する。
店の中に入ると、マスターはマスクをしている。
見た目も辛そうで、風邪を引いたという。
しかしすぐに調子を取り戻し、仕事に徹する。
メンチかつができあがり、配膳される。
食べる前に断面を眺める。
大きく形を残す肉の塊が衣の内側に詰まる。
そして、食べる。
この旨さを愛でるように味わい、自然と目が細くなる。
肉は柔らかく、口の中で肉の塊をあまり意識しない。
意識を肉の塊に集中して、コロコロ感を楽しむ。
次にソースをつけて食べる。
ほのかな酸味が元々あるメンチかつに新しいソースの酸味は強い。
レギュラー・ソースにつけて食べるが、これはソースの甘さが勝る。
これら2つを混ぜてみると、意外と合う。
香の物に赤かぶの酢漬けが添えられる。
マスターが視察に行ったときに寄った道の駅で買ったという赤かぶだ。
からしの風味は上品なうまさを演出する。
肉汁がやや少ないと感じるが、旨さは十分だ。
予約しても早く食べたくて並んで待つ理由はこの旨さにある。
帰り際にマスターから風邪に気をつけてと優しい言葉をかけていただく。
マスターも体を大事になさってほしい。
2016/11/23 13:05