工業デザイナー・榮久庵憲司さんが亡くなる

私が初めて榮久庵さんを知ったのはNHKの番組だった。
榮久庵さんと聞き手の方がクロ253形の個室で話をしていたと思う。
その話とは幕の内弁当である。
榮久庵さんはデザインの哲学を幕の内弁当に喩えていた。

この番組を見て、私は榮久庵さんに興味を持った。
榮久庵さんの代表作である醤油差しは工業デザインの理想がそのまま具現化されたようなものだ。
そして列車のデザインにもその哲学は生きる。
通勤形車両のシートに起こる問題を解決したのも榮久庵さんと聞いている。

通勤形車両のロングシートは7人掛けのものが一般的である。
昔はシートにくぼみをつけたり色を配置したりと人が座る位置を示していた。
しかしこれらは7人掛けを守るための根本的な解決にはならなかった。

そこで榮久庵さんはシートを手すりで区切り、2+3+2シートにした。
2人分のシートは、1人では広すぎるので、もう1人座れる。
3人分のシートは、2人が両端の手すり側に座れば真ん中に1人分の席が空く。
こうして7人が自然に着席できるようにするのも工業デザインである。
この方式はJR東日本209系電車から導入された。
その効果は絶大で、それ以降の車両にも導入されている。

榮久庵さんの作品には工業デザインの真髄がある。
その方が亡くなったのは残念だ…
2015/02/09 21:50
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